【3420】 ○ ジャン=フランソワ・マンゾーニ/ジャン=ルイ・バルスー (平野誠一:訳) 『よい上司ほど部下をダメにする (2005/01 講談社) ★★★★ 《再読》

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「できる」上司が「できない」部下をつくってしまう「失敗おぜん立て症候群」を指摘。

よい上司ほど部下をダメにするド.jpgよい上司ほど部下をダメにする.jpg  ジャン=フランソワ・マンゾーニ.jpg ジャン=フランソワ・マンゾーニ(2017年よりIMD学長)
よい上司ほど部下をダメにする』〔'05年〕

 スイスのローザンヌに拠点を置く世界トップクラスのビジネススクールIMDの教授らによる本書の英題は"The Set-Up-To-Fail Syndrome"で、本文では「失敗おぜん立て症候群」と訳されていますが、この方がタイトルの「よい上司ほど部下をダメにする」よりも内容を分かりやすく端的に表しているかと思います。本書は個人的には18年前に読んだものの再読・再整理になります。

 第1章では、上司は知らず知らずのうちに一部の部下に「できないヤツ」というレッテルを貼り、その部下の失敗を導く仕組みを作り出していることがあるとし、この現象を著者らは「失敗おぜん立て症候群」と呼んでいます。第2章では、部下の成績が悪いとき、上司は「自分たちの努力にもかかわらず」そうなっていると考えるが、実際には「上司の努力ゆえに」部下の成績が悪いというケースが多いとしています。

 第3章では、部下が「できない」のは上司のせいであり、そのことに多くの上司が気づいていないとしています。上司には、「できない部下」に対してどこかで「できないままでいて欲しい」という願望があり、自分が下してきた評価を今さら変えたくないので、「できない」部下がたまに「できた」行動を取っても認めようとせず、「できない」部下が「できない」行動を取ることで予想と一致してその考えは確信に変わり、ますます自分に責任があるとは思わなくなる悪循環になるとしています。

 第4章では、上司は「できる部下」と「できない部下」とでは異なる見方をしてしまい、こうした色メガネで部下を見ることが、「失敗おぜん立て症候群」をさらに悪化させるとしています。第5章では、部下の側からも上司にレッテルを貼ることで上司をダメにしてしまうことがあることを解説しています。第6章では、以上のことから、上司と部下がいっしょになって生み出している巨大なコストの中身を検証しています。

 第7章では、症候群の具体的な治療法を提示し、上司が症候群を理解するには、まず自分の考え方を変える必要があることを説いています。第8章では、「できない部下」とうまく付き合うための枠組みを紹介し、第9章では、症候群の「予防法」を考えています。第10章では、予防につながる行動を取りやすくするには、上司自身が変わらなければならないと論じています。

 「できない部下」をそのままにしておくことは、これからの人材難の時代に業務効率に多大のマイナスを及ぼすに違いないと思います。本書で示されている解決の方法は、やはり部下とのコミュニケーションを密にするということです。事例が数多くとり上げられているので、過去の経験を想起しつつ、自分に言い聞かせるように熟読すれば、上司にとっての自己変革(自省)効果は大きいと思います。それにしても、上司とは色メガネで部下を見てしまいがちなものであるということは、日本も海外も同じなんだなあ。

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